着物の「胴抜き仕立て」とは?
この結城紬の着物は「胴抜き仕立て」という仕立て方です。※ 衽にアレ?と思った方はこちら⇒秘密の仕立て法(着尺の足りない結城紬の反物を着物に仕立てた技、裏ワザ)
「胴抜き」とは、単純に言うと胴(上半身)部分に裏地がないということで、胴裏地という専用の裏地を付けないで仕立てるというものです。
※胴裏地は、衿裏(広衿の場合)や袖裏(袖口裏以外)分も含んだ専用の生地です。袖裏を付ける付けないは着る人の好みです。
袷から単衣に変わる時期のちょっとした合間(袷だと暑いけど単衣じゃまだ寒いなど例えば4月頃)またはその逆で単衣から袷に変わるちょっとした合間、というように季節の合間に重宝するので「合着」とも言われています。洋服の感覚と変わりないですね。
冬でも特に暑がりの人にはこの胴抜きの着物が好まれるようです。それは裾裏や袖裏(これは好み)と袖口裏には裏地が付いているので、着ると人様には袷仕立てのように見えても身頃には胴裏がないのでその分涼しいという理由からです。
近年、冬でも屋内はとても暖かいので「袷」だと暑苦しいことからあえて「胴抜き仕立て」を好む人が増えているそう。また生地によっては厚ぼったく見えるのを防ぐために「胴抜き」で仕立てるという人もいるようです。
「胴抜き仕立て」にも、袖裏のあるなしの違いがある
ひと口に「胴抜き」といっても、好みでちょっとした違いがあります。それは、袖に裏地を付けるか付けないかです。(※袖裏は胴裏地で、袖口裏は八掛地で仕立てる)
あくまで仕立てる側の考え方、着る人の好み、表の生地そのもに向く向かないなどもありますが、仕立てを依頼する時にはそのあたりをよく話し合っておくのも大事ですよね。
この着物の場合だと、袖裏全体には白い「胴裏地」、袖口裏には青色の「八掛け地」が施されています。(ピンクの生地は後で「うそつき袖」を自分で縫い付けたものです)
で、当時よく分かってなかった私は単に胴抜きとしか伝えていなく、胴裏地も送っていませんでした(個人のネット仕立て)。ですがその和裁師さんのご厚意で、なんとお手持ちの胴裏地を使い袖裏地を付けて下さいました。
また別の例で言うと下記シルクウール着物があります。基本的にウール着物は季節問わず「単衣仕立て」で裏地は付けないのですが、これも好みでいいのです。
※ウール着物の高級仕立てというのがあって、紬着物のように見えるそんな織物などには裏地を付ける場合がありますし、付ける範囲も好き好きです。
この袖裏には、袖口裏だけ(八掛け地)が付けてあります。関連ページ
この袖裏には、袖口裏だけ(八掛け地)が付けてあります。関連ページ
このように「胴抜き仕立て」はそれぞれの事情好みに合わせていいのです。また、着物通の方にはこうした仕立てを柔らか着物にもされていたりします。
私の「胴抜き仕立て」着物は、先の紬とウールのこの2枚のみですが、今後はもう少し増やしたいなと思っています。
ついでに、袷(あわせ)と単衣(ひとえ)の違いも確認する
「胴裏」と「八掛け」が付いた着物が「袷(あわせ)仕立て」。それは着物の裏面全体(身頃全体、衿、袖)に裏地が付いていることをを指し、秋冬と春先まで着る着物です。「胴裏」は腰から上、上半身部分の身頃と衿(広衿)、袖に付ける裏地です。「八掛け地」は、腰から下の下半身部分(裾回しともいう)に付ける専用の裏地で、袖口の裏や、衿先の裏(広衿の場合)に付ける分も含んでいます。
「胴裏」も「八掛け」も付けない、全体に裏の無い仕立てを「単衣(ひとえ)仕立て」と言い、秋口、春夏(盛夏を除く)に着ます。
と、ここで補足ですが、あくまで基本ですが、ウールや木綿のきものは季節を問わず裏を付けない「単衣仕立て」とされています(あえて好みで付ける場合もある)
また、盛夏用の着物も勿論単衣ですが、仕立てる生地そのものに違い(絽や紗、麻など)があるのです。
以上ですが、着物というだけで、なんだか難しく考えてしまう傾向が有りますが(もれなく私もそうだった)基本を踏まえたうえで、自由な着方仕立て方でいいのですよね。考えてみたら洋服となにも変わらないじゃない?と思います。