お仕立てお断り!?された結城紬の裏ワザ仕立て、短い反物でも着物は出来る

着尺が足りない反物でも着物に仕立てられた一例

この着物、元は母が仕立てないままに仕舞い込んであった古い反物からの仕立てです。
(これは胴抜き仕立て。「胴抜き仕立て」の着物、についても書いてます)
見てお分かりのように「衽(おくみ)」の一部に別布が使われています。なぜか?
それは、反物の長さが通常(12~13m)よりも短かったからなのです。でもこうしてちゃんと1枚の着物に仕立て上がっています。

★自分の必要な用尺着尺が計算できる、有難いサイトを見つけました。https://www.tsukihiko.com/kimono-youjaku

短い反物でも着物は出来る。この着物を例に、仕立ての技、裏ワザをご紹介しますね(勿論プロの素晴らしいお仕立てです)

反物が短くて仕立てられません!?

ある日、地元の呉服店で「お家で眠ってる反物仕立てませんか?サービス」というのがあり、お得なイベントだったので早速その紬を持ち込んで仕立てをお願いしました。ですが、数日後「反物の長さが足りません」との連絡が。

そこで、身丈や袖丈を短くしたら仕立てられるかどうかを尋ねました。その結果、袖1枚分の長さが足りなくて「やはり仕立ては無理です」とのことだったのです。結局仕立てはあきらめ、あっさり反物を引き取りにいきました。クスン(涙)

袖1枚分というと、断ち切り寸法(縫い代含めて袖丈49センチ)多めに見て110㎝。だいたいその分が少ないということのようでした。

なぜ反物が短かったのかは不明です。母に聞いても分からず、そもそもそういう反物だったのかも?なんて思ったり。。反物の巻き始めには「結城紬の証明書」が貼ってあり、織り房もそのままにありました。

ただ・・広げて巻き終わりまで確認もしてはいなかったので、最後の部分がどうなっていたかは分かりません。

いつかの仕立てのためにと「湯通し」の依頼をした地元の専門店からも、特に不思議がられたということもありませんでしたが。。

反物の見積もり工夫と別布の継ぎ足しで仕立てが可能になる

せっかく仕立てる気持ちになったので、なんとかこの反物を着物にしてあげたいと思いました。

自分で2度ほど着物を仕立てた経験から、改めて長さを計り計算し見積もってみると仕立ては可能であることが分かりました。

見積もり方(パズルのように裁断する部位の位置変え)を工夫すれば可能なのです。もちろん限界もあります。その場合はまた違う方法で仕立て方も多様にあるのです。(例・・片身替わり仕立て、パッチワークはぎ仕立てなど。そうなると、そもそもの意図がまた違いますが)
前にも一度お世話になったネットのお仕立てやさんにメールで問い合わせ、反物の事情を詳しく説明すると、気持ちよくお仕立てを引き受けて下さいました。

仕立てる前に重要なこと「反物の柄合わせ」

そう、大事なことが有ります。それは柄合わせ。特に必要のないものも有りますが、この反物にはよく見ると白っぽい斜めの線状になった織り柄が有ります。

この柄がパーツごとにバラバラなのは、仕立てではあり得ないのです。柄の流れが全体的に繋がることが大事なのです。柄合わせが必要だと短い反物なら尚のこと工夫も限られてしまうのですが、さすがプロの仕立てだと感動したものです。

これが仕立ての工夫、技術、裏ワザ

この仕立てのために送ったもの(地方発送)

★反物(約、袖1枚分短い)
★短い反物の足りない分として、手持ちにあった別の結城紬地の端切れ1m10㎝。
★八掛けの反物(胴抜き着物なので胴裏は必要なく袖裏も必要ないと思った)

出来上がった着物の状態とその技

★身丈は身長と同じで出来上がり寸法158センチとしました。腰紐位置は低めが好みなのでそれで十分おはしょり分も取れる(身長のマイナス5㎝でも大丈夫)
★袖丈は普段着仕様として短め43センチ丈の大好きな元禄袖です(写真のピンクのうそつき袖は後日付けました)
★バチ衿です。掛け衿は付いていなくて、本衿をつまんで縫い、あたかも「掛け衿があるように見える仕立て」になっています。衿の重なりが無い分スッキリと薄めの衿になっています。もたつきを嫌いあえてこのようにする場合(着る人の好み)もあるそうです。
右衽(おくみ、着た時内側に入る部分)の一部に別布を使っています。同じ結城紬だけれど色が全く違います。

着てしまえば人様からは全く見えない部分で、しかも八掛け(裏地)があるので別布がうっすら透けるということもありません。
以上、こんなふうに仕立ての工夫や技術、裏ワザで1枚の着物になりました👍

こんな仕立て技もある~感想と補足

立派に素敵に出来上がり戻ってきて、しみじみこの着物を見て心から満足したのでした。(この機会に他にも仕立て同時依頼)
  
※この着物に関すること「胴抜き仕立て」についてのページ

仕立士さまは、やりくりが大変だったと思います。反尺が足りないうえに柄合わせですから・・。格安の仕立て料金なのにこんなに手間を掛けさせてしまい、申し訳なかったなと思いました。ありがたいこと、この上ない仕上がりです。

こうして、短かった母の反物から、ひときわ愛着のある着物になったわけです。今回は足りない反物から着物をということでしたが、いつか意図的にハギハギ着物(笑)を仕立てたいなと思っています。

短い反物は、帯やコート類などに仕立てる場合もよくありますが、ここでは着物に限定して書きました。そのうえで、他にもいろいろな方法、仕立て方もあるのです。

例えば、着た時におはしょりを作らない「対丈着物」
左右の半身を色又は柄などを違えた「片身替わり着物」
部分的に違う生地を繋ぎ合わせた「パッチワーク着物」
など。

それらは古い着物の仕立て替えにもよく用いられている方法、仕立て方でもあるのです。それについてはまた機会が有れば('ω')

おわり。

追記
参考になる?ページ 片身替わりや継ぎはぎ仕立ての例