母の形見シルクウール着物と母のこと

稽古に来て行った着物。昨日はシルクウールにした。これも母のお下がりで今となっては形見です。

長いこと広い借家に住んでいた母は、その建物の老朽化に伴い小さなアパートに引っ越しが決まりました。

その時に必要以上の家具家財に衣装箱など、かなりのを整理したのです。箪笥の他に山と積まれた衣装ケース・・・

地方から姉夫婦たちも駆けつけて、分かっていながらもその荷物の多さにはさすがに辟易しながら作業したものです。

特別何の趣味もなかった母は、景気のいい時代から60代を過ぎる頃まで「着道楽」的なところがあった。

実際は仕舞っておくほうが多くたいして着もしないのだけど・・母にとっては唯一の楽しみ。これが趣味でありストレス発散でもあったのでしょう。

よくよく話し合ってのすえ、さすがに老いた母も整理や処分については渋々ながらも納得してくれたのでした。

勿体ないと思ってもそれしか方法もなく・・時間的にも中身をひとつひとつ確認する余裕すらなく一気に片付けて。

それでも和服の入った衣装ケースは辛うじて私のところに4つだけ預かることになり、あと1つだけは引越し先の部屋へ。(母のたっての希望、もう着ないのだけど思い出のひとつとして)

やがて・・・全く興味の無かった私も和服に心が向き、預かっていた衣装ケースを納戸から開かずの扉を開けるがごとく(笑)開けて見る!

着れそうなもの着れなさそうなもの・・良さそうな物そうでもなさそうな物、好きな柄、好みに合わないものなど、ワクワクしながらいちいち当てて見た♪

選んだ一枚を着て母に見せにいった時、それはそれは喜んでくれた。

「○っちゃんが着てくれるんなら嬉しい!良かった少しでも取っておいて。うん、いい女だ。あんたにみんなあげるから着てちょうだいね○っちゃんのために有ったようなものだね。ああ良かった!」

目に心に焼きついている 母のあの時の笑顔。。
あれから5年後・・施設への入所をきっかけに母の手元に残しておいた衣装ケースも必然的に私のもとへ。

その最後のひとケースに入っていたシルクウールの着物なんです。
これも、今では私の宝物。  

明日は母の一周忌だ。