おゆきさん雪と共に去りぬ 

入院して二日目、あまりにもあっけなく母は逝ってしまった。

母の名前は「ゆき」雪のように真っ白で美しい子・・おゆきさん、ゆきちゃん、そう呼ばれて育ったと、昔に叔母から聞いたっけ。

「わっちは85までがいいところだねえ」近年は何かにつけてそう言っていたが、ほんとにその通りになった。

旅立つその顔はシワも消えて柔らかく色白で、子供のように無垢な表情になっていた。波乱の人生だったけど痛恨の念を微塵も感じさせない所願満足の表情。

今にも「なんちゃってー!」って起き上がりそうだねって、私が思わず言うと皆も「ほんと、そうだね!」と笑った。真の成仏をしたんだね。その表情からも、私たちは心底安堵と感謝そして救われた思いで一杯になった。

出棺の時、扉を開けると
あ・・初雪・・
雪が、迎えに来てくれたかのようだった。